お知らせ|松本民芸家具のラッシチェア
このたび浜松市の丸東工芸舎において、企画展「松本民芸家具のラッシチェア」を開催いたします。松本民芸家具が製作するラッシ製品が30種類以上揃います。
材料となるフトイの生産量減少により納期未定の状態が続き、一時継続が危ぶまれていたラッシチェアですが、近年長野県での栽培に取り組み生産量が安定してきたことから、ラッシ製品の製作自体も順調に進んでいます。
ラッシチェアの起源は18世紀イギリスのRush-seated chairです。その美しいイスを再現しようと、創業者池田三四郎氏夫人のキクヱ氏を中心になって研究を重ねました。当初は作り方や編み方もわからず、濱田庄司氏がヨーロッパから持ち帰った貴重なラッシチェアをもとに研究させてもらったといいます。材質として着目したのが、当時まだ莚(むしろ)や菰(こも)の材質として使われていた浜松産のフトイ。繊維がスポンジ状になっていて温かみもあり、弾力性と耐久性にすぐれた素材。試行錯誤のうえ、フトイを編む技術を確立させ、次第に広く普及するようになりました。昭和31年には、一連のラッシ編み技術が認められ民藝協会賞を得るなど次第に評価が高まっていきます。
しかしながらその反面、浜松でのフトイ生産は急激に減少していきます。畳の普及や他製品の出現などで、莚や菰などの需要が減ったこと、農家の稲作への転換、またフトイ栽培には非常に手間がかかることなどがその原因に挙げられます。
平成15年の記録では栽培農家わずかに1軒。その農家も高齢のために栽培をやめてしまいました。唯一小規模で生産を続けていた農家から株分けしてもらい、長野県の休耕田に移植。浜松と長野とでは気候も違い、栽培方法に苦慮しながらも、次第に栽培量も増えてきています。
そうして栽培したフトイをよく乾燥させて編み込んでいくのがラッシチェアです。湿らせて柔らかくしたフトイを数本束ね、撚りながらフレームに1列ずつ編み込んでいきます。編み目のバランスを観ながら、フレームを裏返し裏返し、1本1本編み込んでいく作業の末に美しい編み目のラッシが出来上がっていきます。自然素材ならではの美しい表情もさることながら、使い込み時間経過したときの、味わい深い艶やかな飴色に変化したときの表情もまた魅力的です。
「松本民芸家具のラッシチェア」
日時:2021年9月3日(金)~12日(日)
場所:丸東工芸舎店内(浜松市中区佐藤3丁目7-3)
お問い合わせ:053-468-2787